野いちご

老人の悪夢と現実。
BSでずいぶん前にやっていたものを今日やっと観終わりました。終始ゆったりと淡々と進み、目立たせようとする感じではない映画。
しかし主人公、イーサク教授が見る悪夢は妙に現実的であり、また苦いものが残ります。音楽の効果もあって、サスペンスじみたところも。作中で言われているほどイーサク教授が冷酷には見えなかったので、悪夢のシーンではただひたすらに可哀想に思えてしまいましたが、途中からイーサク教授の息子のお嫁さん、マリアンに心をつかまれました。
彼女、最初は表情も意味深なものがあるというか、笑顔を浮かべてはいるのですが満面の笑みでもなく、どこか冷徹な印象があったんですね。しかし旅の途中、終盤に差し掛かるあたりでマリアンの抱く不安の正体もわかり、そこでちょっと涙腺が緩みました。
この映画に出てくる人々は誰しも、大なり小なり問題にとらわれています。それは死に対する不安であったり、過去の幻影であったり、また、人と人との愛の有無であったりするわけです。
旅行に行くために同乗してくる若い三人組の存在が、この映画の薄暗さをずいぶん和らげている気がします。
とてもシンプルなストーリーですが、何より表情が活きる映画だと思いました。